釧路地方裁判所帯広支部 昭和58年(ワ)48号 判決
主文
一 被告らは原告に対し、各自金一六七万一二〇五円及び右金員に対する被告島田武については昭和五八年四月七日から、被告幌西自動車運輸株式会社については同年三月三一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告らの負担とする。
四 この判決は、原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告らは原告に対し、各自金一七九万九〇八〇円及びこれに対する被告島田武については昭和五八年四月七日から、被告幌西自動車運輸株式会社については同年三月三一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行の宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1(本件衝突事故)
原告が昭和五八年二月二二日午後四時ころ、自己の所有する普通乗用自動車(登録番号 帯五五ほ一七九〇号、以下「原告車」という。)を運転して、北海道上川郡清水町字清水第五線四〇番地附近国道三八号線道路上を、清水町市街方面から帯広市方面に向けて走行中、対向してきた被告島田運転にかかる普通貨物自動車(登録番号 札一一い八三二八号)がセンターラインを越えて進行して来て原告車と正面衝突し、原告車両を大破させた。
2(責任原因)
(一) 被告島田について
右被告は、本件衝突事故現場付近道路がゆるい下り坂であるため、加速とスリツプの危険があるのに、自己の前方を進行する乗用自動車を追い越そうとしてセンターラインをはみ出して走行し、対向して進行する原告車を発見してもスリツプのためブレーキが作動しきれずに本件衝突事故を惹起させたもので、進路前方の安全を確認せずに進行した過失がある。
(二) 被告幌西自動車運輸株式会社(以下「被告会社」という。)について
右被告会社は貨物の運送業を営んでおり、被告島田が被告会社の運送業務の執行中に本件衝突事故を惹起させたものであるから、民法七一五条に基づく使用者責任がある。
3(損害)
(一) 車両損害
本件衝突事故により原告車は大破し、自動車の購入代金二二四万六九八〇円から事故後の原告車の引取(査定)価額金七二万四〇〇〇円を差引いた金一五二万二九八〇円相当の損害を蒙つた。
(二) 代車使用料
原告は、本件衝突事故により原告車を使用することができず、訴外帯広三菱自動車販売株式会社から普通乗用自動車一台を賃借し、その使用料として金二一万円を出損した。
(三) 司法書士費用
原告は、本件訴訟法提起しこれを遂行するために、訴状等の書類の作成を司法書士に依頼し、金六万六一〇〇円を出損した。
4 よつて、原告は不法行為に基づく損害賠償請求として、被告らに対し各自金一七九万九〇八〇円及びこれに対する被告島田については訴状送達日の翌日である昭和五八年四月七日から、被告会社については同じく同年三月三一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 請求原因2の事実は認める。
3 請求原因3の事実は否認する。
第三証拠
証拠関係は、本件訴訟記録中の証拠目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
理由
一 請求原因1(本件衝突事故の発生)及び2(被告両名の責任原因)の事実については、当事者間にいずれも争いがない。
二 そこで、原告が本件衝突事故により蒙つた損害額について検討する。
1 車両損害
成立に争いのない甲第五号証、第一一号証、証人西村章夫の証言により真正に成立したものと認められる甲第六号証、同証言及び弁論の全趣旨によると、原告車は昭和五八年二月一七日に購入された新車であつて、本件衝突事故の衝撃により屋根部分がずれてしまい、同部分は溶接しているため従前どおりに修復することが困難であること、原告車を修理したとしても、事故前における新車同然の性能が回復できるかどうか必ずしも明らかでなく、特に風切音の発生は修理後においてもこれをなくすことが極めて困難であると窺われること、さらに、原告車は修理後機能面において何ら問題が生じないとまでは言い難い状態にあることなどのほか、原告車は本件衝突事故当時まで僅か六日間しか使用されておらず、原告車に約五五万円程度を要する費用をかけて修理を試みたとしても、修理後の価額としては事故後の査定額金七二万四〇〇〇円に右修理費用を加えた金一二七万円程度にしか達せず、後述する事故前の原告車の車両価額として認められる金一九五万一七七五円に比較してみてもかなり低い額にとどまることが認められ、右各事実に徴すると、原告が新車を買替えることは無理からぬところであつて、社会通念上買替えは相当と言うべきである。ところで、原告車は前記認定したとおり、新車として購入後僅か六日間使用したにとどまり、その間の評価落ちは新車購入価格の五パーセントとするのを相当とするところ、前掲甲第六号証によれば、原告車の新車購入時の車両本体及び付属品一式の合計価額は金二〇五万四五〇〇円であり、その五パーセントを控除した金一九五万一七七五円をもつて評価落ち後の原告車の車両価額となること、そして、原告が原告車を購入するにあたり要した諸費用としては、取得税金八万一〇五〇円、重量税金三万七八〇〇円、車庫証明金九三〇〇円、自賠責保険金三万三七五〇円、登録費用金三万〇五八〇円の合計金一九万二四八〇円であることが認められ、これらの総合計金二一四万四二五五円から、前述したとおり事故後の原告車の引取り査定価額金七二万四〇〇〇円を差引いた金一四二万〇二五五円をもつて、原告車の車両損害額と認めるのを相当とする(なお、自動車重量税、自賠責保険料については、車両の使用期間を考慮して算定すべきものであるが、原告車においては使用が僅か六日間にすぎないから、その全額をもつて購入費と認めるのが相当である)。
2 代車使用料
成立に争いのない甲第一二号証、前掲証人西村章夫の証言により真正に成立したものと認められる甲第七号証及び同証言によると、原告は、原告車が使用できないため昭和五八年三月一一日から同年四月二一日までの四二日間、訴外帯広三菱自動車販売株式会社から普通乗用自動車一台を代車として一日五〇〇〇円にて賃借し、その使用料として金二一万円を支払つていることが認められ、右支出額をもつて代車使用料の損害と認めるのを相当とする。
3 司法書士費用
弁論の全趣旨から真正に成立したものと認められる甲第八号証、原告本人尋問の結果によると、原告は本件訴を提起のうえこれを遂行するために、訴状その他の書類の作成を訴外坂下尊司法書士に依頼し、金六万六〇〇〇円を支払つていることが認められるが、右支出額のうち訟務基本報酬等金四万〇九五〇円をもつて本件衝突事故と相当因果関係の範囲にある損害額と認めるのを相当とし、その余の支出部分は訴状に貼付した印紙、予納郵券及び商業登記簿謄本並びに交通事故証明書の交付を受けるに要した費用に相当し、いずれも訴訟費用として考慮されるべきものであるから、本件衝突事故から生じた損害の範囲内に含まれないと言うべきである。
三 以上のとおりであるから、原告の本訴請求は、被告両名に対し各自金一六七万一二〇五円及び右金員に対する、被告らに対し本訴状が送達された日の翌日であることが記録上明らかな被告島田については昭和五八年四月七日から、被告会社については同年三月三一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 井上稔)